「IT系フリーランスになるにはどうしたら良いの?」「どんな仕事をしている人がいるのかな?」と疑問に思う人も多いのではないでしょうか。
今回は、「プログラミング」と「農業」という2つの専門分野を持つフリーランス、齋藤毅さんにお話を聞きました。
普段どのようにお仕事をされているのか、自分のスキルの活かすためにどのようなことに取り組まれているのかをご紹介していきます。
齋藤毅。1982年生まれ。幼少の頃より植物に興味があり、明治大学農学部農学科に進学する。奈良先端科学技術大学院大学バイオサイエンス研究科に進学し植物の細胞生物学を専攻。在学中に応募したビジネスプランコンテストで上位入賞。
在学中、知人の起業に参画し「ベテラン農家の技術を短期間で習得する方法論の開発」を行う。その成果がNHK「趣味の園芸 やさいの時間」で紹介されるなど高い評価を得た。
会社の事業拡大時に会社の方針とずれたことで退職。現在はフリーランスとして農業関連会社の技術顧問やプログラミング講師を務める。
運営サイト:植物のミカタ
1. 齋藤毅さんの現在のお仕事について
Q. 現在のお仕事について詳しく教えてください!
齋藤さん
前職で開発をしていたオープンソースソフトウェアのコンテンツマネージメントシステム「SOY CMS」とネットショップパッケージ「SOY Shop」のメンテナンス、小学生〜高校生向けのプログラミン教室の講師と農業関連会社の技術顧問をしています。
ーー(編集部)「SOY CMS」はwebサイトを作るためのWebアプリ、「SOY Shop」はネットショップを作るためのWebアプリですよね?
齋藤さん
そうですね。「SOY CMS」をきっかけにサイトの運営の相談を受けることが多く、私の主の収入源となっています。
農業関連会社(肥料屋)では最新肥料に関する調査や報告、研究機関との共同事業の仲介を行っています。
プログラミングと肥料の知識があることから、農業のIoTに関する相談も増えています。
ーー(編集部)プログラマとしての「webサイト開発」や、農業に関するお仕事など、幅広くやられているんですね!
Q. フリーランスという働き方を選んだ理由は?
齋藤さん
実は「フリーランスになろう!」と前向きに行動していたわけではないんです。
前職に在籍中、副業でプログラミング教室の講師と農業関連会社の技術顧問をやっていたんですね。転職も考えたのですが「副業可」の転職先を探すのも難しいですし、退職しても引き続き「SOY CMS」の開発は続けたかったので、個人事業主として開業届けを提出しました。「なりゆきとしてフリーランスになった」という感覚です。
ーー(編集部)副業で色々とやられていたことが、結果的に独立に繋がったわけですね!
2. 齋藤毅さんがフリーランスとして活動する中で感じていること
Q. フリーランスになる時はどんな気持ちでしたか?
齋藤さん
初めは不安でした。SOY CMSの開発を仕事に繋げようと思っていたのですが、マネタイズが難しくて…。
ーー(編集部)最初はやはり不安があったんですね。
齋藤さん
ただ、はじめてしまえば何とかなるもので、オープンソースのコミュニティで知り合った方が最初のお客様となってくれました。その方のために開発を行い、たまった知見をブログで公開していくと、ブログ経由のお問い合わせが増えて、安定的に仕事が入るようになったんです。
ーー(編集部)なるほど、一度お仕事を受注したらそれが実績になって、次のお仕事につながっていったんですね!
齋藤さん
おっしゃる通りです。ブログで「お仕事実績」だけじゃなく、専門的な内容を記事にすることで信頼感が出て、受注につながっているんじゃないかなと思います。
Q. フリーランスになって良かったと感じるところはどこですか?
齋藤さん
私はフリーランスが自分に合っていると感じています。
自分が動いたことが全て自身の実績に繋がり、実績が新たな出会い・仕事に繋がるのが、フリーランスの良いところだなと。
例えば、何かを調べてブログに投稿した際、会社のブログだと会社の実績になってしまいますけど、フリーランスとして自分のブログに投稿すれば、それは全て自分の実績であり資産になりますから。
ーー(編集部)自分のやったことの評価が全て自分に返ってくるのが、齋藤さんに合っているんですね!
齋藤さん
また、「生活のちょっとした場面を事業につなげる」といったことができるのも、個人事業の良いところだと感じています。
例えば私は、「子供の興味があることに興味を向ける」ということを意識してやっています。子供がレゴに興味があれば、レゴにマイコンを付けてラジコンカーを作ったり、マインクラフトに興味を持てば、マインクラフトプログラミングに手を出したり…。
ーー(編集部)すごい!子供との遊びも本格的なんですね!…でも、それが事業に繋がるんですか?
齋藤さん
こういった活動をブログなんかで発信すると、けっこう見てくれている人がいるんですよ。
例えば「子供向けプログラミングイベントで講師として来てほしい」なんて依頼がきたりするんです。
農業関係の技術顧問の方も同様で、子供が昆虫に興味を持てば、昆虫採集を介して殺虫剤の話題に繋がって、殺虫剤の使用量を減らすといった技術開発につなげられるなって思ったり…。
フリーランスとして能動的に仕事をしているからこそ、こういった「生活を事業にしよう」という視点を持てるようになったと思うんですよね。
子供と一緒に遊びながら、一緒に仕事もできて、誰かが感謝してくれればお金を得ることもあるんだなあと。
ーー(編集部)お子さんとの触れ合いが事業に繋がるのは面白いですね!家族との時間を増やしながら、事業も成長させられる。フリーランスだからこそできることな気がします。
Q. フリーランスになって大変だったことはありますか?
齋藤さん
大変なのは経理です。
私はシステム開発やコンサルタント系の業務に当たり仕入れが発生しないので帳簿は薄めですが、それでも毎日お金を意識して資金切れを起こさないように注意を払うのは大変です。
ーー(編集部)なるほど、「投資」と「回収」を自分でコントロールしないといけないのは、フリーランスの「経営」的な側面として必要になってきますよね。
齋藤さん
そうですね、自分で全部やらないといけないので…。
他にはお金を稼ぐのは自身一人だけということも困ることが多いです。
納期が近い時に体調を崩した時に、代わりがいないので休めないんですね。
休むにしても相手とのスケジュール調整等は必ず行わなければならず、そこから初めて安静に休めるようになります。
せめて、取引先とのやり取りをこなせる人がいればな…と思うことが多いです。
ーー(編集部)「自分が休むと仕事が全部ストップ」という状況になるのは、フリーランスならではの大変さですね…!
3. 齋藤毅さんが思う「IT系フリーランスになるために大切なこと」
Q. フリーランスになるために具体的にどのような手順を踏んでやっていくのが良いと思いますか?
齋藤さん
プログラマで私に近い形に限って言えば、日頃から「オープンソースソフトウェアの開発」に関わっておくと良いのではないかと思います。誰もが知る有名どころではなく、中堅どころのオープンソースソフトウェアを選ぶのがコツです。
ーー(編集部)中堅どころが良いのは、ライバルが少ないからですか?
齋藤さん
おっしゃる通りです。
例えばブログCMSで有名なWordPressを例に挙げると、古参のライバルが多くて新参者が入る空きはありません。
中堅どころであれば、案外簡単に名前を覚えてもらえることが可能になります。
オープンソースソフトウェアにはコミュニティがあるので、その中で「〇〇と言えば齋藤」と言われるようなポジションを確立しておくと、フリーランスになっても仕事に繋がりやすいです。
私の場合は農業の事業を通して「マーケティング視点」をある程度身につけていたので、「業務改善のアイデアを出せる人」としての立ち位置でやれているように思います。
ーー(編集部)なるほど。ライバルの多すぎないコミュニティ内で、専門性を持っていることが大事なんですね。
齋藤さん
コミュニティで目立っていると、「コミュニティ主催のイベントで公演してくれないか?」といった依頼を受けることもあるんです。そうなると「先生」の立場になるわけで、コミュニティ内の他の人から、仕事の相談をされやすくなるんですよ。
ーー(編集部)確かに、「その世界で有名な人」の立ち位置になると、お仕事にも繋がりやすそうです!
齋藤さん
仕事の斡旋サービス(フリーランスエージェントなど)を利用するとしても、コミュニティへの参加をして技術力を高めておくことはしておいた方が良いと思います。自信や単価の向上に繋がるはずですから。
Q. これからフリーランスになりたいと思っている人のためにアドバイスをお願いします!
齋藤さん
フリーランスは自身の体が最大の資本で、病気や怪我で事業の維持が難しくなることがあります。病気にならないように日常的に体力作りをし、怪我をしないように柔軟運動をし、無理をせず休むことが大事です。
私もフリーランスになってから一日10km以上歩く習慣を設けましたが、健康の向上はもちろんのこと、歩くことによって頭が整理され、成果物の質が上がり利益率も向上しました。
「足腰が強ければお金を稼げる仕事はたくさんある」という思いを持ち続けることが大切です。
ーー(編集部)歩くことが健康とお仕事の両方に良い効果をもたらしているんですね!
齋藤さん
そうですね。また、文章を書く習慣も大事にしたほうが良いと思います。
文章力って、ブログなどをやっているともちろん重要なんですが、私は「相手に文章で伝える能力」が大事だなと。
フリーランスは専門的な仕事をすることが多いと思いますが、それ故に自分の技術力では解決できない問題にぶち当たることも多いんですね。
問題を解決するために、自分よりも熟練した方に質問をすることもあるのですが、そのような人は自分よりも単価が高く、時間を割いてくれることは稀です。電話や会議に応じてくれることは少ないんですね。つまり、専門性が高まれば高まるほど、文章で的確に質問をする必要が生じるわけです。高度な内容の質問を文章にするのは非常に難しいので、普段から極力文章を書いて、慣れておくことが大事だと思います。
私も最低1日1記事はブログを更新するようにしています。
ーー(編集部)1日1記事はすごいですね!それだけ文章力を重要視されているのが伝わってきます。
齋藤さん
あと、Books & Appsというサイトがあるのですが、安達 裕哉さんの投稿されている記事が良いのでおすすめです。
専門性の高い仕事をする上での心構えで参考になるような記事がたくさんあります。
よく開業するにあたって、経理や確定申告の知識が必要だと思う方も多いですが、起業される方が増え、freeeのような代行サービスが充実していて、あまり心配しなくても良いです。
>>サイトを見てみる
フリーランスに限らず、起業全般に言えることだと思いますが、資金切れを起こさなければ事業は継続出来ます。事業の継続には顧客に対して価値あるものを生み出し続ける必要がありまして、常に万全の状態で仕事に望む必要があります。
ーー(編集部)健康・文章力が重要ということと、経理の知識はなくてもあまり心配しなくて良いとのことなど、これからフリーランスを目指す人にとって参考になるお話ばかりですね!
Q. フリーランスになるにあたって使って良かったサービスがあれば教えてください!
齋藤さん
Raspberry Piはもっとはやくに触れておいた方が良かったと思える程素晴らしいものでした。
Raspberry Piは電子工作のイメージがありますが、WindowsやLinuxといったOSを手軽に入れ替えることができるという良さがあり、OSを弄り倒して動かなくなってもすぐにリカバリーできるので、自身の技術力を高める上でこんなにも素晴らしいものはありません。
Q. 今後どのようになっていきたいか教えていただけますか?
齋藤さん
農業IoTの技術顧問のような立場になれるように精進しています。
現在の私に足りないことがOSやマイコンの深い知識で、これらの知識を得たら、改めて栽培を俯瞰してみていく予定です。
マイコンの知識は子供たちとのおもちゃ作りが近道だと考えていて、直近ではプログラミング教室に注力を注ぎます。
ーー(編集部)具体的かつ面白い目標ですね!取材にお答えいただきありがとうございました!
編集後記
プログラマと農業という2つの専門性をお持ちのフリーランス、斎藤さんにお話を聞きました。
特に、「フリーランスになったことで、お子さんとの遊びが事業に繋がるようになった」というお話は印象に残っています。ワークライフバランスを良くするアイデアの1つなのではないかなと…!
「オープンソフトのコミュニティの中での立ち回り方」のような具体的なお話まで聞かせていただけて、私としても非常に興味深く、楽しいひとときとなりました。
また、斎藤さんの個人ブログ「植物のミカタ」では、農業やプログラマに関する発信を行っています!フリーランスの方は、「実績のアピール方法」が参考になるかと思うので、覗いてみてはいかがでしょうか。